名手、名将にあらず/ロニー・シールズ

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選手に混じってトレーナーが何人か入っているレジェンドシリーズ、トレーナーの話ほどなるほどなとおもう言葉はありません。日本で浜田剛史と戦ったロニー・シールズはあれがアメリカなら勝ちだったかもしれない。しかし退屈なファイトだった。あれが強打の浜田に対抗する自分のベストだったのだ。

天才的なアスリートは、その余りある才能ゆえに苦労を知らず、哲学がないとは、野球の野村監督の言葉。ロニー・シールズには哲学があった。

ロニー・シールズは世界クラスのトレーナーとして有名だが、元は優秀なボクサーだった。

シールズは1976年のオリンピックを目指していたが、判定で伝説のシュガー・レイ・レナードに敗れた。242勝21敗という優れたアマチュア記録を残した。プロでは1980年代にジュニアウェルター級で戦い、2度世界挑戦したが失敗に終わった。ビリー・コステロと浜田剛史に敗れた。

1988年、26勝19KO6敗1分で現役を引退した。

シールズ
「とてもいいキャリアでした。日本に行って浜田と戦った時、世界王者になれたとおもった。あの試合は負けたとはおもわない。勝ったとおもったけどジャッジの信用を得ることができなかった。出来る限りの事をしたけど世界王者になるには何かが足りなかったのでしょう。」

シールズは自分がトレーナーになるとはおもっていなかったが、周囲が彼の性格や特徴を見抜いていた。1987年後半ルー・デュバとジョージ・ベントンはシールズに連絡をとり、ヒューストンで1984年のオリンピックチームからプロになった選手のトレーニングを手伝って欲しいと頼んだ。しかしシールズはこの申し出を断った。

デュバとベントンは諦めずにシールズを口説き続けた。トレーニングキャンプを視察したシールズはそれが自分に向いている仕事だと気づくとあとは水場のアヒルのようだった。

シールズ
「私が最初に仕事をしたのはイベンダー・ホリフィールドです。彼は熱心で、あなたはこれをした方がいいとか、あなたのミット打ちは素晴らしいとか逆に色々教えてくれた。その後、ロッキー・ロックリッジ、メルドリック・テイラー、タイレル・ビッグス、リビングストン・ブランブルなどのミットを担当した。とても楽しかったです。」

シールズはジョージ・ベントンと多くの時間を過ごした。シールズはベントンを「百科事典」と例えた。対戦相手のビデオをみてゲームプランを練った。その経験がその後のシールズの成長と発展に大いに役立った。

ホリフィールドから始まり、マイク・タイソン、バーノン・フォレスト、パーネル・ウィテカー、アルツロ・ガッティ、ファン・ディアス、ギジェルモ・リコンドーらと過去に仕事してきた。現在はフィジカル&コンディショニングコーチのダニー・アーノルドと共にヒューストンの最先端施設、プレックスを拠点にしている。エリスランディ・ララやジャモール・チャーロらが主力選手だ。その他にも数多くの才能ある選手を抱えている。

プライベートでは30年連れ添う妻と3人の子供、3人の孫に囲まれ、時間があれば妻とデートを楽しんでいる。

印象的なファイターについて語ってもらった。

ベストジャブ パーネル・ウィテカー

彼はジャブの85%は当てたとおもう。何一つ無駄がなかった。ジャブを全ての起点にし、ディフェンスで全てを演じた。フェイント、コンビネーション、正しい距離を確認するために常にジャブを使って試合を組み立てていくのです。今、最も強くていいジャブを持っているのはジャモール・チャーロだとおもいます。

ベストディフェンス ウィテカー

ウィテカーで決まりです。彼にパンチを当てるのは至難の業だ。あらゆる試合でディフェンスを基点に試合を組み立てていった。ディフェンシブな動きがまずあり、相手は攻めなくてはならない。だから彼は楽に攻撃をクリエイトできるのです。私が出会った中で最高峰のディフェンスの達人です。

ベストチン ホリフィールド

間違いなくホリフィールドです。アマでもプロでも彼は常に小さなヘビー級だった。自分より大きな男ばかりが相手だった。小さな自分が大きなヘビー級の男たちに勝っていくにはどうしたらいいか、スピードを生かすことをよくわかっていた。ヘビー級ではハンドスピードもフットワークも最上級だった。そこでイベンダーに勝るヘビー級はいないでしょう。だから彼は長きにわたり偉大なヘビー級王者になれたのです。

イベンダー・ホリフィールドのコンビネーションのスピード、常に足を使って動いていたことをよく思い出してみてください。どんなにホリフィールドを追いかけてパンチを当てても倒せません。同時に彼は鉄のアゴを持っていました。

デビッド・トゥアも頑丈でした。けれど彼はイベンダーほど栄光の舞台で活躍できませんでした。イベンダーはレイ・マーサー、レノックス・ルイス、リディック・ボウ、マイク・タイソンなどその時代の全てのライバルと戦いました。そんなレベルで世界王者になるのは本当に難しい事ですが彼は全員と戦い、4度も王者になりました。だから彼です。

おっと、アルツロ・ガッティの事を忘れていました。彼もご存知のようにとても頑丈なアゴを持っていました。しかしヘビー級のパンチが一番強烈ですからホリフィールドを選びます。

ハンドスピード メルドリック・テイラー

メルドリック・テイラーより速い男はいません。信じられないハンドスピードでした。50連打できてそのうち25~30発は当てることが出来ました。

エディ・ホプソンという男も素晴らしいハンドスピードの持ち主でしたが、私の担当ではなかったからあまりよく知りません。彼は後に世界王者になりました。(IBFジュニアライト級)彼もすごいスピードの持ち主でした。

フットワーク テイラー

これも間違いなくテイラーです。彼と戦う者は必ず追手に回らされます。あんなに若くて何でもできる子供は信じられませんでした。

スマート ウィテカー

とても賢いファイターです。ジョン・ジョン・モリナもクレバーでした。とても才能豊かなジュニアライト級でした。彼は3回世界王者になっています。とってもとってもインテリジェントでした。激しいファイトをする男でした。彼ら2人が忘れられないインテリジェントなファイターです。一人に選べといえばウィテカーですが。

バーノン・フォレストもこのカテゴリに入る男でした。素晴らしい才能、インテリジェンスだった。でも彼は志半ばで死んでしまった。ギジェルモ・リコンドーももちろんこのカテゴリに当てはまります。でも彼はまだ本当の試合に恵まれていない。これからにかかっているからね。

屈強 デビッド・トゥア

トゥアとロッキー・ロックリッジです。ロッキーはとても強靭なファイターでした。誰もがロッキーを倒そうとしたけど無理でした。彼がロジャー・メイウェザーを初回KOした試合を今でも鮮明に覚えています。

デビッド・トゥア、誰も彼を動かすことはできない。彼は今まで出会ったヘビー級で最も足のサイズが大きかった。でも背は低かった。彼の太ももは普通の男性の身体より太い。山の如く不動の男、断然トゥアが強靭でした。

ベストパンチャー トゥア

マイク・タイソンではありません。レノックス・ルイスとの試合に備えて彼と仕事をしましたが、それはみんなが知っているタイソンではない他の誰かでした。

デビッド・トゥアこそが私が出会った最強のパンチャーです。パンチが当たれば誰でも倒れました。唯一倒れなかったのがアイク・イベアブチです。ジョン・ルイス戦をみてください。あれがデビッド・トゥアのパンチです。

今の選手でいえば、ジャモール・チャーロにその名誉を与えます。

ベストスキル ウィテカー

素晴らしいジャブとディフェンス、それは今後もずっと長い間最高レベルであり続けるでしょう。彼は世界の全てのスキルを持っていました。イベンダー・ホリフィールドもそうです。素晴らしいジャブと、ヘビー級ではあんなコンビネーションが打てる者はイベンダーを除いて一人もいませんでした。だから、大きな相手を打ち負かすことができたのです。

総合 ウィテカー

ウィテカーとホリフィールドでコイントスをしようか。ウィテカーのあの輝かしい才能、誰もウィテカーには勝てません。もしホリフィールドがライトヘビー級だったら、彼は帝王として君臨していたでしょう。クルーザー級を完全支配しヘビー級も支配した。でも、総合的に一人選ぶとなると、才能で誰も敵わないという点でウィテカーですね。

ウィテカー、彼は世界の全てのスキルを持っていました。

すごい誉め言葉だ。ジャブとディフェンスで全てをクリエイトする。
ウィテカー自身のファイトは時に退屈だったが、あの神がかったディフェンスを全ての基点に完全無欠なファイト、もうちょいノックアウトを狙うエキサイティングをミックスさせていくのが究極のボクシングなのかもしれない。

ロニー・シールズの性格や特徴を見抜いて誘い続けたルー・デュバとジョージ・ベントンに人を見抜く目があったのだろうな。
あらゆるスポーツ、教育現場にあてはまると考えさせられる。

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1 COMMENT

アバターメヒコ

浜田VSシールズ戦は、TVで観戦しました。私の印象では、浜田さんが右膝?にサポーターを着けていて、それしか記憶に残らない試合でした。今では、お二人ともそれぞれ指導者ですね。いつかお二人が育てたボクサーが、世界戦で合い間見えたら感慨深いものがありますね。

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