夢が叶ったのです。俺は世界チャンピオンになるはずじゃなかったんです。世間では、お前は年寄りだ。どこにも行けないよと言われていた。世界に衝撃を与えた。俺の人生は76秒で変わったんだ。
2013年夏、劣勢だったチャド・ドーソンを第1ラウンドのワンパンチでノックアウトし、WBCライトヘビー級王座を併合したアドニス・スティーブンソンは、その脚本を破った。読者投票で「Knockout of the Year」に選ばれた。その後、スティーブンソンは2010年代の5年半の間に9回の防衛に成功した。
1977年9月22日、ハイチ・ポルトープランスで生まれた。
スティーブンソン
「父が亡くなったのは、母が俺を妊娠しているときだった。子供の頃、いつもなぜ父は死んだのだろう “と言っていた。とても難しかった。父親がいない中で育つんだ。母は私にとって母であり、父でした。母は俺のために何でもしてくれた。彼女はよく働いたし、勇敢なファイターだった。」より良い生活を求めて、アドニスが7歳の時に母親は一家でカナダに移住した。ハイチ出身の若者にとって、それは大きな変化だった。
スティーブンソン
「気候は衝撃的でした。冬は寒いと言われていたが、頭の中では、『たいしたことない。俺には簡単な仕事だ』ってね。ジャケットや帽子を買わなければならない。足にはブーツを履かなければならなかった。寒かったんです。人間はどうやってここで生きているんだろう、と思ったよ。」しかし、彼は生き、決してトラブルから遠ざかってはいなかった。
スティーブンソン
「学校を卒業できなかったんだ。路上で問題を起こしていた。ストリート・ギャングだった。ボスがいたけれど、俺は人にコントロールされるのが嫌いなんだ。」スティーブンソンは工場で働いていたが、ストリートで金をせしめ、犯罪行為に手を染めるようになった。
スティーブンソン
「ある男がいて、そいつに操られたんだ。そいつが言うことは全部、俺がやる。彼に操られていた。俺はポン引きだと言われた。女にお金を渡すように仕向け、彼にお金を渡した。彼は俺を利用したんだ。今思えば、俺は甘かったんだ。」結局、彼の極悪非道な行為は追いつめられ、スティーブンソンは暴行、脅迫、売春婦との共謀の罪でモントリオールのボルドー刑務所に収監された。4年の刑期のうち18カ月を服役した。
スティーブンソン
「刑務所にいる多くの人が、外に出ては戻ってくるのを見たよ。2、3日前に彼を見たんだ。どうして? 警備員は笑って『心配しないで、戻ってくるよ。彼らはいつも戻ってくるから』と。俺は彼を見て、『外に出たら、もう二度と戻ってこないよ-絶対に』と言ったんだ。」2001年に出所したスティーブンソンは、強い意志を持ってボクシングに取り組んだ。2004年にケベック州チャンピオン、2005年と2006年にはカナダ国内タイトルを獲得。メルボルンで開催されたコモンウェルスゲームのカナダ代表として出場し、2006年には銀メダルを獲得した。
この活躍により、有名なプロモーターであるイヴォン・ミッシェルと契約することになった。2006年9月、29歳という遅い年齢でプロに転向。
10戦目でカナダ王座を獲得し、急速に成長した。しかし、13勝10KO（そのうち7つはオープニングラウンド）した後、ルー・ディベラの下でアメリカでのデビュー戦を戦い、危険なジャーニーマン、ダーネル・ブーンに2ラウンドでストップされた。
スティーブンソン
「彼を過小評価していたし、真剣に受け止めていなかった。彼は俺にショックを与えた。大変だった。俺は見放されてしまった。イヴォンを説得しなければならなかった。彼はOKしてくれて、セカンドチャンスをくれたんだ。」スティーブンソンは復帰後、デレク・エドワーズ（KO3）、スタイル的に難しいアーロン・プライヤージュニア（TKO9）をノックアウトした。
2012年、偉大なエマニュエル・スチュワードの弟子のひとりとなった。2人はすぐに打ち解け、スチュワードはスティーブンソンが次のレベルへ進むのを助けた。パワーパンチのサウスポーはスチュワードの弟子ジーザス・ゴンザレス（KO1）、世界ランクのノエ・ゴンザレス（TKO2）を退け、IBFエリミネーターでドン “ダ・ボム “ジョージ（TKO12）を止めた。
2012年秋にスチュワードが他界すると、スティーブンソンは亡きトレーナーの甥であるシュガーヒルと組むようになった。
カール・フロッチの必須挑戦者でありながら、スティーブンソンはWBC王者チャド・ドーソンとの対戦をラインアップしていた。しかし、その前にブーン戦の敗北を忘れなければならないと考えた。
スティーブンソンは、ブーンを6ラウンドでノックアウトし、残酷なリベンジを果たした。
スティーブンソン
「その必要はなかったんだけど、やっちゃったんだ。イヴォンに言ったんだ。お願い、彼と戦わなければならない。彼は俺のことをひどく悪く言っている。俺がどんな試合をしても、彼は『アドニスが彼と戦うのか？ハッ! 俺はアドニスに勝ったんだぞ』と。イヴォンが言ったんだ “こいつと戦っても意味がない” “危険を冒すのか？って。俺の名誉のためだ。俺はタダで戦うと言った 一度はやられたが、二度目はない。」その結果、スティーブンソンは2013年6月にモントリオールでドーソンと対戦することになった。
スティーブンソン
「俺は彼にとっては簡単なはずだった。でも、あの手のパンチは何千回も練習したんだ。彼はサウスポーで、俺もサウスポー。左を打てば火になる。一度は距離を取られたけど、二度目は打ち抜いたよ。夢が叶ったのです。俺は世界チャンピオンになるはずじゃなかったんです。世間では、お前は年寄りだ。どこにも行けないよと言われていた。世界に衝撃を与えた。俺の人生は76秒で変わったんだ。」
「スーパーマン」は、元タイトルホルダーのタボリス・クラウド（TKO7）、将来のクルーザー級王者トニー・ベリュー（TKO6）を相手にタイトル防衛に成功し、2013年を締めくくった。
ベリュー戦はWBOのベルト保持者セルゲイ・コバレフとのダブルヘッダーの一環としてHBOで放送された。新年には対戦することが望まれていた。しかし、アル・ヘイモンと契約するというビジネス上の決断を下し、ショータイムに移籍した。
スティーブンソンは2014年にアンジェイ・フォンファラ（UD12）の後半の突進を抑えたが、ドミトリー・スコホーツキー（KO5）やトミー・カーペンシー（TKO3）という弱者と対戦したことで、批評家から文句を言われるようになった。
スティーブンソン
「対戦相手となると、人々は常に何かを言うものだ。ボクシングは、ご存知のように、プロレベルでは簡単なスポーツではないし、誰もがそれぞれ違った才能を持っています。俺は人々が言うことを気にしない。」スティーブンソンは、2018年5月に2階級制覇のタイトルホルダーであるバドゥ・ジャックとスリリングな一騎打ちを行い、そうした非難者を黙らせることに貢献した。
12ラウンドでドローに終わったスティーブンソンは、「信じられないような試合だった」と語った。彼が立ち上がったままだったとき、 “長い夜になるだろう “と思った。
スティーブンソン
「いつもはKOを狙っているんだ。あの試合は、持久力と回復力、そしてあきらめないということを見てもらえたと思う。」その後、スティーブンソンは2018年12月にケベックシティで必須挑戦者であるオレクサンドル・グヴォジクと対戦。11ラウンドにパンチの連打を浴びて倒れるという結果に終わった。
スティーブンソン
「俺は試合を支配していた。でも負けた。それがボクシングだ。バスルームに行き、シャワーを浴びて、出てきたら、頭の調子が悪いような気がしたんだ。調子が悪く、快適ではありませんでした。頭に痛みを感じた。病院に行って、手術を受けたんだ。」スティーブンソンは脳に重症を負い、3週間昏睡状態に陥った。ようやく目が覚めたとき、彼は長く困難な道のりの始まりにいることに気づいた。
スティーブンソン
「歩き方、話し方、食べ方を学ばなければならなかった。読み書きを学ばなければならなかった。俺はまるで赤ん坊のようだった。」現在は負傷前の約80％になったと推定している。
2019年、スティーブンソンはWBCの大会で表彰され、WBCチャンピオン・オブ・ホープに選ばれた。
現在45歳のスティーブンソンには5人の子供がおり、カナダのラバルに住んでいる。
ベスト・ジャブ バドゥ・ジャック
彼はジャブの出し方、タイミング、忍耐力がある。素早いジャブだった。
ベスト・ディフェンス ジャック
いいディフェンスをしていたよ。彼はパンチをブロックすることができる。
ハンドスピ-ド チャド・ドーソン
彼のジャブはとても速いのがわかった
フットワーク オレクサンドル・グヴォジク
彼はリングをとてもよく動き回っていた。
クレバー アンジェイ・フォンファラ
初戦で戦ったとき、彼は俺にパンチを出させ、ブロックし続け、良い瞬間を待っていた。とても賢く、自分のタイミングを待っていた。その瞬間が来たとき、彼は俺を捕らえ、彼がやっていることはすべて俺を消耗させることだと悟りました。俺のエネルギーは失われつつあり、彼はそれを知っていたのです。彼はチャンスだと思い、俺を捕らえ、そして俺は倒れ、そして立ち上がったのです。
屈強 フォンファラ
彼は体が大きく、とても強い。彼は200ポンドで歩き回っていたよ。
ベストパンチャー ドーソン
彼のパワーは感じられたし、彼は俺を見下した。彼がリズムを取り戻す前に、俺は心の中で早く彼を仕留めなければならないと言ったんだ。
ベスト・チン サキオ・ビカ
彼をノックアウトしたボクサーはいなかったと思う。クリーンヒットしたら、彼は床に倒れ、立ち上がりました。彼はディフェンスも良かったが、アゴも良かった。彼の頭を殴ったとき、手のひらにパンチの感触がありました。彼は顎が強い。
ベスト・スキル トニー・ベリュー
いい技術を持っていたと思う。彼は腕が長く、ジャブが上手かった。アーロン・プライヤーJr.は背が高くて上手かった。
総合 ジャック
彼は2階級世界チャンピオンだった。彼は俺のベストを引き出してくれた。我々は素晴らしい試合をした。
29勝24KO2敗
カナダスーパーミドル級王座
WBCアメリカ大陸スーパーミドル級王座
WBCインターナショナルスーパーミドル級王座
NABA北米スーパーミドル級王座
NABO北米スーパーミドル級王座
IBFインターコンチネンタルスーパーミドル級王座
WBC世界スーパーミドル級シルバー王座
WBC世界ライトヘビー級王座（防衛9）
リングマガジン世界ライトヘビー級王座
これだけの話が出来るなら80％回復というのを信じてよさそうだ。
スティーブンソンは当時、全階級で最も在位の長いエキサイティングなサウスポーのKOマシーンだったが、コバレフのようなライバルを避け、勝てる相手を厳選し、試合間隔も長く、正当に評価できない、好きな王者ではなかった。
しかし、元々が29歳からのデビュー、戴冠したチャド・ドーソン戦は大いなるアップセットで、ドーソンこそ次世代のスター候補、スティーブンソンなど通過点に過ぎなかった。
そこから、左の超強打を武器に長く防衛していったのは立派だ。左が怖いからこそ築けた長期政権といえた。
ライバル対決をしない姿勢から、オレクサンドル・グヴォジクを応援していたが、長期政権が途切れたのは喜んだが、そのまま脳損傷となり、生死をさまよい、ボクサー人生を断たれたのは気の毒だった。
自分のようなファンは無責任で残酷だ。
誰をもKOできる恐怖の左を武器に年よりなのに大活躍したスティーブンソンだが、年齢を考えると潮時だったのだろう。最後に大きな代償を払うことになったが、無事に回復してくれてなによりだ。
ハイチ発カナダから、今後、これより偉大な世界王者が現れるのだろうか。
スティーブンソンの数奇な人生の功績は偉大だ。
