峠を越えてなお/アルツール・ベテルビエフ Vol.2

たまたまみつけたアーサー・ベテルビエフの独占記事は2017年のもので、エンリコ・コーリング戦を直前に控えたものでした。今は既に王者となり防衛も2度クリアした状態なので、そのあたりの内容は省きました。コーリングも、ドイツを代表するトップアマとして数々の実績ある選手だったようです。だから決して油断せずリスペクトしていると。

結局、オレクサンドル・グヴォジクもベテルビエフも、かなり人間的に大人で賢い頭脳派であり、そこが強さの秘訣だ。

私が彼のファンなのは「怖い」からだ。

プロボクサーへの道を決意したにも関わらず、ベテルビエフは学業にも専念し続けた。不本意な怪我でキャリアが順調に進まなかった時、なんらかの形でボクシングを引退した後、大学で取得した学位が人生の役に立つ日が来ると信じて。

ベテルビエフ
「私の一番のコーチは兄です。彼がボクシングをやりたくなかったら、やめるべき100の理由を持つべきだと言いました。兄はいつも大事な事を教えてくれます。」

ベテルビエフはトップアマチュア時代にトッププロに会ったことがあるのだろうか

ベテルビエフ
「トッププロに会うことはめったになかったですが、私の所属していたロシア代表チーム自体がオリンピック、世界選手権、ヨーロッパ選手権のチャンピオンばかりでした。「ゴールデンチーム」というのですが、それが刺激であり名誉なことでした。プロボクサーのヒーローはモハメド・アリとマイク・タイソンです。子供の頃から夢中でした。」

ベテルビエフのスタイルは素朴で血に飢えた、殺人者の本能のようなファイトという点でマイク・タイソンに似ている。ベテルビエフのベストファイトのひとつに元IBF王者のタボリス・クラウド戦があるが、当時バーナード・ホプキンスとアドニス・スティーブンソンにしか負けていないこの強敵をわずか2回で圧倒した。

ベテルビエフ
「モハメド・アリとマイク・タイソンが好きですが私のスタイルは全く違います。トップファイターを参考にすることはありますが、私は誰も真似しません。」

ベテルビエフはなんといってもその衝撃的なパンチ力で知られている。プロに適した要素を持ったトップアマチュアといえる。

ベテルビエフ
「試合が少ないことにイライラしないようにしています。全ては適切な瞬間に起こると信じています。」

翌朝、彼は日が暮れる前に起きてバッグに荷物を詰めてジムに向かった。コーチが到着する前から彼はロードワーク、ジムワークをはじめる。

マーク・ラムゼイ
「ベテルビエフは非常に強くて速いです。全てが完成されており、さらに向上しようとしている。トレーナーとしてのキャリアで出会った中で最も規律正しいアスリートですが、一番重要なのはとても頭がいい人間だという事です。

彼は試合が少ない。ハイリスクローリターンな状況です。全勝、全ノックアウトという記録は相手を怯えさせてしまいます。ファイトマネーを上げないと誰も戦ってくれません。」

ベテルビエフ
「ラムゼイはボクサーを理解していますが、ビジョンを強要しません。ボクサーの声に耳を傾けてくれるので仕事がとてもやりやすいです。」

ベテルビエフのあまりのパワーと対戦者探しの苦労を考えると階級アップも視野に入れる必要があるのではないか

ラムゼイ
「今のところ、ライトヘビー級で減量の苦労はありません。将来的にはそれも視野に入れる必要があるかもしれません。」

リングワークを終えてグローブを外したベテルビエフは汗でいっぱいのシャツを脱ぎ、水を飲みクールダウンする。ライトヘビー級の4団体を統一した王者は過去にいない。それが彼のモチベーションだ。

ベテルビエフ
「統一王者になるために必要なことは全てやります。しかし私個人では制御できない問題もあります。だから、4団体統一王者というのはあくまで大きな目標であり名誉です。」

ベテルビエフは今フィジカル的にプライムタイムにいる。(2017年)統一王者、彼の時間はいつかといえば、それは今だ。

ベテルビエフ
「肉体的にも精神的にも準備は整っています。私を心の底から支えてくれる全ての人々に感謝します。私には王座統一の準備が出来ています。この目標を達成するために毎日最善を尽くしています。」

https://www.youtube.com/watch?v=c4vO3d8zxG4

かつてユーリ・アルバチャコフは、いつ頃世界王者になれると自覚したかと聞かれ、デビューした時から自信があったと言っていた。(むしろその時の方が強かったといわんばかりに)

ベテルビエフもあるいは同じ状況かもしれない。少なくとも2017年からずっと統一戦の準備はできていた。

ベテルビエフは今フィジカル的にプライムタイムにいる。(2017年)統一王者、彼の時間はいつかといえば、それは今だ。

あれから2年が過ぎ、その2年でベテルビエフはあわや判定勝利(コーリング戦)やダウン(カラム・ジョンソン戦)など、少しだけ綻びをみせつつあるが、毎日最善を尽くし、2019年の今でもプライムタイムである事を願ってやまない。

オレクサンドル・グヴォジクもまた、現役最長王者のアドニス・スティーブンソンを下した本格的な王者であり、ちょうどこの記事でベテルビエフがピークであると言われた32歳、今が一番の時期だろう。名匠、鬼コーチのテディ・アトラス最後の門下生でもある。ベテルビエフのボクシングを分析し尽くしてくるだろう。

ベテルビエフの本領は

素朴で血に飢えた、殺人者の本能のようなマイク・タイソンのようなファイトだ。

激しく鋭く襲い掛かって圧倒する。ライトヘビー級最強はベテルビエフで決まりだな、というファイトを魅せて欲しいと願う。私がボクシングにおいて一番重視する、「怖さ」を湛えた選手だから。

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