無冠の帝王の孤独/(ナイトアレキサンダー)アレクサンデル(サーシャ)・バクティン Vol.1

強いということは、孤独であるということ。

無敗のIBOスーパー・バンタム級王者アレクサンダー・"サーシャ"・バクティン(31-0, 12 KO)が引退した。

バラシカ出身の31歳は、「プロとしてのキャリアに終止符が打たれた」と語った。

バクティン
「健康上の問題があるのでもう戦わない。そのかわりに、政治家としてのキャリアを追求するつもりだ。また、若いファイターを指導し、新たな高みに導くことで、ボクシングの世界で活躍し続けるつもりだ」

2012年9月、フィリピンのロリ・ガスカと空位のIBOスーパーバンタム級を争った。119-110、118-110、118-111と一方的なスコアであったにもかかわらず、「ナイト」(バクティンのニックネーム)にとっては全てが狂った消耗戦だった。

バクティン
「4ラウンドから悪夢のようだった。何も覚えていないし、純粋に本能だけで戦った。最後のゴングまで耐えて、勝てたことを今でも不思議に思っています。試合後は救急車で一晩過ごしました。その後、4日間入院し健康を取り戻しました。」

バクティンの最後の戦いは 3月31日にコロンビアのヨグリ・ヘレラ (22-16、15 KOs) を4ラウンドでストップした。

バクティンはバンタム級とスーパー バンタム級で注目すべきプレーヤーだった。

アレクサンダー・バクティンは、チタ地域のクラスノカメンスク市で生まれた。
8歳のときに初めてリングに入った。子供の頃は柔道をしていた。しかしクラスノカメンスクにボクシングスクールが出来てボクシングに転向した。9年生を卒業した後、バクティンはウランウデに引っ越した。ここで真剣にボクシングに取り組み、同時に溶接工および配管工としてライセウムで勉強しその後VSTUに入った。

1997年、アレクサンドルはロシアのジュニアチームに所属。ジュニアのロシア選手権(1998年、1999年)、ロシアのカップ(1999年)、世界選手権銅メダリスト(1998年)、ジュニアヨーロッパ選手権(1999年)で優勝。ブリヤート共和国の高等スポーツエクセレンススクールで訓練を受けロシア連邦の軍のSCのためにプレーした。ロシアの国際スポーツマスターの称号を獲得。

プロではロシアの伝説的なコーチであるアレクサンダー・ジミン(かつてユーリ・アルバチャコフやオルズベク・ナザロフをロシア初のプロの世界王者に導き、ニコライ・ワルーエフやデニス・シャフィコフなど多くのボクサーを指導した人物)からボクシングを教わった。

バクティンはそのキャリアの大部分を日本で過ごした。現在でも日本のバンタム級王座防衛回数の最多記録(9回)を保持している。また、OPBFバンタム級とWBAインターナショナルスーパーバンタム級のベルトも獲得した。

日本滞在中に、刑事事件を起こした。東京のナイトクラブで喧嘩をし2人の狂暴な男をノックアウトした。バクティンは無罪であることが判明したが、ボクサーが一般人相手に事件を起こしたとして謹慎処分を受けた。

しかし、過去8年間、様々な団体で常にトップ10入りを果たしているにもかかわらず、メジャーのベルトを争うことはなかった。

バクティン
「そうだね、少し悲しい気持ちだよ。最近まで、周辺階級のどんな王者にも挑戦する準備ができていたんだ。チャンスがなかったのが残念だ。しかし、未来は今、自分のためにある。前に進む時が来たんだ。」

究極のレベルで自分のスキルを試す機会がなかったにもかかわらず、バクティンはアマチュアとしての完璧な成績(124勝4敗)に加えて、無冠の帝王としてのキャリアを締めくくった。

ロシア人スタイリストは、元WBA王者ネオマール・セルメニョをはじめ、本田秀伸、ゲルソン・ゲレーロ、川端賢樹、ルイス・メレンデスといった元世界タイトル挑戦者を一方的に破っている。

遂に究極の栄光に到達しなかったはいえ、彼は自分のキャリアに誇りを持つ権利がある。

https://www.youtube.com/watch?v=UzmVFEQ3OFY
https://www.youtube.com/watch?v=eKz0Rui4hQA

もう映像もあまりない。

神経系の怪我で、生命に関わるものだったらしい。
ロリ・ガスカとの試合はニコライ・ワルーエフの試合のため、アレクサンダー・ジミンがおらず、代わりのコーチが筋トレばかりした、それが失敗しすぐにスタミナを消耗し最悪のコンディションに陥ったのだそうだ。筋トレには回復期間が必要なのだ。

ドミトリー・ピログは世界王者になったが、脊髄の怪我で無敗、王者のままこの世界を去った。

たらればはあるが、誰一人、アレクサンデル(サーシャ)・バクティンには勝てなかった。

ジャブ一本、片手であしらわれた。

31戦無敗の31歳、日本王座は9度防衛、マイナータイトル数知れず。
しかし誰にも相手にされず、一度もチャンスを掴めなかった。

強いということは、孤独であるということ。

アマチュアボクシング:134戦130勝(60KO・RSC)4敗
プロボクシング:31戦31勝(12KO)無敗

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