秘密・孤独な使徒/S.O.G.(神の子)アンドレ・ウォードVol.2

S.O.G.(神の子)アンドレ・ウォードを知ることは、バーナード・ホプキンスと同じくらい奥が深く難解な事だが、それがすなわちボクシングを知ることであり人間を知ることにもつながる。本質・核心が潜んでいる。

季節

アンドレ・ウォードは、兄のジョナサンと共にカリフォルニア州ノースオークランド、ヘイワードでアイルランド系アメリカ人の白人の父親に育てられた。アフリカ系アメリカ人の母親はそこにほとんど登場しない。母はコカイン中毒でサンフランシスコの路上で20年間のほとんどを過ごした。

ウォード
「このことについて私は無知ではありません。(白人でも黒人でもなく)両親双方から自然に受け入れられないという現実を受けて、私は異人種であることに気づきました。「僕は一体誰なの」という問いかけだけが残りました。」

父のフランク(デューク)ウォードはかつてアマチュアのヘビー級選手で、ガラス職人として家族を支えた。子供の頃のアンドレは大きな父親をスーパーマンのようにおもっていた。アルコール依存症の父親を持つフランクは酒を一滴も飲まなかった。

しかしアンドレは次第にこの老いたスーパーマンがクリプトナイト(惑星クリプトンが爆発して砕け散った時の残骸。この石の前では、スーパーマンは力を吸い取られてしまう)を持っていることに気付く。アンドレが生まれるずっと前からヘロイン依存症と戦い続けていた。仕事が終わった父親はいつも死んだような目をしていた。

ウォード
「父は睡眠薬を飲んでいるのかとおもった。」

12歳の時、父親の部屋で注射針を見つけた。道で拾ったものだと父親はごまかした。

ウォード
「私はずっと大人になるまで、ヘロインの事がわかっていませんでした。」

父親は何年もヘロイン依存症のままで、病気が悪化し家族は家を失った。治療と再発の繰り返しがずっと続いた。

そのような過去を理解することでアンドレは客観的な見方を身に着けていく。

ウォード
「ボクシングはただの季節(シーズン)です。これは私の人生ではありません。自分が取り組んでいる事に過ぎず私自身ではありません。だからといって真剣に受け止めていないわけではなく、持てるものを全て注いでいます。」

幽霊

ヘイワードのミッション大通りのはずれにオリンピックのユニフォームを着たウォードの壁画がある。バージル・ハンターが当時やっていた米国空手とボクシングのジムの壁にスプレーで塗装したものだ。ウォードは9歳の時に父のフランクに肩車されてこのジムを窓の外から眺め夢中になり、翌日には入会した。ウォードはその時の入会書類のコピーを未だに持っている。

ウォードの両親が、ヘロインの依存症、家庭内暴力、破産、ホームレス、リハビリの繰り返しに陥ると、バージル・ハンターはただのトレーナーではなく、ウォードの保護者となりゴッドファーザーになった。

1994年、ハンターと出会って1年後にウォードはアマチュアの輝かしいキャリアを始めた。ジョー・ルイスのように、ウォードはアマチュアの最初の試合で敗北したが、その後119回戦って4度しか負けなかった。1998年、13歳の時からウォードは一度も負けたことがない。敗北もアマチュアでよくあるジャッジの気まぐれのようなものだった。

ウォード
「コバレフ戦は決定的瞬間です。彼はホンモノの男だ。でも壊れない人間はいない。私はコバレフを王者として尊敬しています。危険な戦いです。」

コバレフはリングで相手を死に至らしめたことがある。

ウォード
「知っています。しかしこの試合はコバレフにとっても危険な戦いです。私がリングに足を踏み入れる度に私の遺産は危険にさらされます。何かを証明したり、名声を作ろうとしているハングリーなファイターが相手です。このスポーツで史上最高と言われるファイターはほんの数人しかいません。私はそのレベルまで行きたい。」

難敵コバレフを2度退け(再戦ではTKO)たにも関わらず、ウォードの人気に火がついたとはいえない。リスクを抑え、他の誰も真似できないような間合いや角度を作り出し距離を調整するウォードの職人的なファイトを退屈だと言う人もいる。

ウォード
「コバレフ戦で、私は十分な事をしたという人もいるし、ただアウトボックスしただけだと言う人もいます。私はそれをキャリア全体で何度も繰り返してきました。人々はロイ・ジョーンズに対してもフロイド・メイウェザーに対しても同じような事を言ってきました。

私の仕事は彼らが議論さえできないような事をすることです。それが私のモチベーションです。彼らは何度フロイドが負けることに賭けたでしょうか。結局賭けに勝てないとわかると彼らはフロイドのスタイルを批判します。

私は20年以上もボクシングをしてきました。たくさん打たれました。批評家が言うような気絶してキャンバスに横たわるようなわかりやすいものではないかもしれませんが、私はたくさんの罰を受けてきました。試合ではそれがわかりにくいかもしれませんが、私の妻は知っています。彼女は続きを知っている。試合後2.3日、彼女の助けなしにはベッドから起き上がれない日々、あれは一体何だと言うのでしょうか。

私は使命を背負っているのです。私が冷淡にみえるならお許しください。私は偉大なるものを追いかけています。私のファイトが守備的にみえるなら恐らくそうでしょう。それには理由があるのです。かつて私と同じことを言って(偉大なるものを追いかけていると言って)大きな犠牲(ダメージ)を払った先人がいます。

私は悪魔を避けようとしているのです。それらの亡霊を振り払おうとしているのです。」

Vol3に続く

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