井上尚弥という完全無欠のファイターの台頭以前に最も技術的に洗練されていた日本人ファイターが川島郭志だったと言ってもほとんど異論はないだろう。”アンタッチャブル”と言われたディフェンステクニックは芸術の域に達していたが、タッチされるのを極度に嫌ったゆえの高等技術でもあった。
川島郭志は日本のスーパーフライ級のベストではないかもしれないが、技術的にみれば最も注目すべき王者といえる。
アマチュアの高校王者を経てプロ入り。デビュー当時、鬼塚勝也・ピューマ渡久地らとともに平成三羽烏と呼ばれて注目されたが、新人時代に挫折したことで他の二人に大きく遅れをとった。平成三羽烏の座も後発の辰吉丈一郎に奪われたが、クサること無く弱点を着実に克服した。
プロデビュー当初は米倉健司会長の方針によりプロ向きのインファイトに近いスタイルであったが、徐々にアウトボクサーとしてのスタイルを確立していった。世界王者としての川島は熟練のミッドレンジオペレーターだった。
現役時代は日本プロボクシング史上屈指のテクニシャンとも称され、中でも”アンタッチャブル”(触らせない)と称された防御技術は世界的にも高い評価を得ていた。スリッピング・アウェーと呼ばれる防御技術を世間に認知させた。また普段の練習態度も極めて真面目で、世界王座獲得後も電車でジム通いを続けていた。
1994年5月4日、17戦目で世界初挑戦。横浜文化体育館でWBC世界スーパーフライ級王者ホセ・ルイス・ブエノ(メキシコ)に挑み、11回にダウンを奪った末の12回判定勝ち。王座奪取に成功。
https://www.youtube.com/watch?v=v1SjSIYfqyQ
イグナシオ(ナチョ)ベリスタインの教え子、ブエノは韓国の強打者、文成吉から王座を奪った卓越したメキシコの伝統に連なるテクニシャンだったが、川島のほぼ完ぺきなパフォーマンスの前に初戦、再戦とも力及ばなかった。
初防衛戦。有明コロシアム(開閉式の屋根を開け、屋外での試合となった)で2度の世界挑戦経験を有する指名挑戦者カルロス・サラサール(アルゼンチン)と対戦し、12回判定勝ち。サラサールは川島戦後、IBF世界ジュニアバンタム級とWBO世界フライ級王座を獲得し、2階級制覇を果たす。
サラサールは後の世界3階級制覇王者マルコ・アントニオ・バレラとWBC世界スーパーフライ級指名挑戦者決定戦を行い、12回0-2の判定負けを喫したものの、バレラが試合前の計量で失格となったため代替で指名挑戦権を獲得した経緯がある。
川島はその後も安定感あるスキルを発揮し6度の防衛を重ねたが、7度目の防衛戦で迎えた指名挑戦者、後にバンタム級でジョニー・ゴンザレスをノックアウトすることになるジェリー・ペニャロサによって王座を奪われた。
川島とペニャロサは多くの点で鏡のような緊迫した試合となった。両サウスポーはミドルレンジで最高の仕事を続け、がっちりと肩を並べ好勝負を繰り広げた。しかし結果は攻撃の積極性でペニャロサがわずかに上回った。川島は3年弱保持し続けてきた世界王座から陥落。
その後、極度の視力低下が判明したのを機に、再起することなくそのまま引退した。
あっさりと引退し、影で選手を支える存在になった川島は人柄的に地味なままだが、そのボクシングは日本人離れしており、日本人でもテクニックで世界に対峙できるのだと誇らしかった。王者が貴重な時代にあって、川島は本格的なテクニシャンとしてもっと長く、最強王者の道を突き進んでいくものとおもっていた。
しかし、元々打たれ脆いところがあり、打たれないために究極に磨き上げたファイトスタイルといえ、本来パワーがある割には勝ち味が遅く慎重で判定で決着する面が多かった。その慎重さが、わずかに好戦的で意欲的だったペニャロサに屈した部分だったのだろう。
川島2度目の防衛戦は本来であれば、マルコ・アントニオ・バレラだった。サラサールに2-0辛勝の発展途上のバレラと完勝の川島、当時初めて戦ったとしたら、川島のアンタッチャブルな技巧が上回っていたのかもしれない。
美しく偉大な王者だったが、もっと活躍できる余地、能力があった。
トレーナーとして持っている引き出しも半端ない事だろう。
ペニャロサも川島をかなり評価していた。
[st-card id=79704 ]ペニャロサ
「川島は私のパンチを外すのが上手く滑らかでとても速かった。サウスポーで素晴らしいフットワーク、ハンドスピード、ヘッドムーブを持っていた。彼との試合は難しいものでした。彼はアンタッチャブルなコンプリートファイターだ。彼に勝てたのは私の方がハングリーでコンディションがよかったせいでしょう。私の最高の勝利は川島郭志とジョニー・ゴンザレス、この2試合です。」
アンチャタブル川島さんですか!!私には、攻防兼備じゃなくて、防攻兼備です。スリッピング・アウェー??でしたかね?顔と首を捻ってパンチ力を半減させるディフェンス!見事でしたね。カウンターを決めるのも上手かったイメージがあります。
川島vバレラ見たかった。
解説は川島さんが一番好きですね。
アンタッチャブルなんて言われちゃうと専守防衛、ディフェンス意識強くなっちゃいますよね。いいテクニシャンでした。
そうですよね!!従来の日本人ボクサーには少ない、ディフェンシブマスターが私の印象です。あくまでも私感ですけど!今でも私には、記憶に残る名ボクサーのひとりです。
ボクシング見始めた頃の5度目の防衛戦セシリオ・エスピノとの最終回、フックの連打をブロッキングで受けきったシーン、フックをブロックするのではなく、ブロックにフックが吸い込まれるように見える先の先の防御に感嘆しました。
どうしても防御のイメージが強いけど、KO率が結構高いんですよね。
友だちが昔相模原ヨネクラで練習してたのを見たことがある、って話してましたが、相模原にも練習に行ってたんでしょうか!?
ミッドレンジオペレーターか‼ なかなか上手い表現ですね。
もしかして、ジョー小泉さんですかね。
英文にそう書いてあって、訳すよりそのままの方が伝わるなと。
わざと照明を消して暗い場所でシャドーをしたりとか、一風変わったことを
当時からやっていた方だと聞いたことがあります。
集中力が尋常ではなかったんだろうなと想像できますが、なんというか
雰囲気のある選手でしたね、武士のような。
後年のインタビューでスリッピング・アウェーの事を聞かれて、
川島「スリッピング・アウェーって、何だっけ?」(!)
例の防御テクニックの事だと説明されて、
「あぁ、名前知らなかった」(!!)
それでこのテクニックを広く認知させたのだから、凄いというか何というか・・・
厳密にはテクニックじゃありませんからね。
威力は殺せるけど、そもそもパンチ貰う時点でダメなんだから。
長谷川も確かそういったことを言ってました。
いやいや何を言ってるの
どれだけディフェンスがうまくても避けられないパンチは1試合にいくつかあるんだから重要なテクニックでしょ
たとえばゴロフキンvsカネロのこれなんかはスリッピング以外に手段がなかったが成功した例
https://www.youtube.com/watch?v=M8GQ_nIf4qg
スリッピング・アウェイというのは日本語です。」海外のボクシングには存在しません(私の知識の限りでは)
海外でも「スリッピング・アウェイ」を使う選手はいますが、用語として存在しない。
つまり技術じゃないんです。
詳細は違ったかもしれませんが、長谷川はこんなこと言ってました。
「ボクサーはパンチを貰わないのが仕事。どうしてもかわせないときに、スリッピングアウェイでごまかすことはあるけど、しょうがなくやってるだけ。あんなのを技術だとか言ってほしくない」
用語として存在しないと何故技術ではないんですか?
例えば、ヒル対マスケ第1戦で、ヒルがマスケの右ガードにパンチして、リードブローを出させないようにして戦ったのとかは立派なテクニックだと思いますが、用語はありませんよ。
逆にホールディング、バッティングはテクニックもクソもないただの反則ですが、用語が存在します。
やらない方がいいからテクニックではないってのはわかるんですけど、用語がないからテクニックではないの因果関係が全くわかりません。
理由を教えて下さい。
何故用語がないとテクニックではないのでしょうか?
まともに貰うよりかいい。
以前何かの本か新聞のインタビューで、長谷川さんが、「自分は、身体が固くて柔軟差に欠けてるから、中南米のボクサーの柔軟差が本当に羨ましい。でも来ると予測できるパンチは、耐えられるし打点をずらして半減させられる。KOはドンピシャのタイミングです。」とうろ覚えですみません。違うボクサーの方かも知れません。