見た目だけでは計り知れない奥の深さがあるのがボクシングの面白いところで、4階級を制したロバート・ゲレーロはフェザー級から始まり、どの階級においても決して一流の王者にもハードパンチャーにもみえなかったが、どんどん不可能を可能にしていった。その不思議こそがまるでThe Ghost(幽霊)のようだった。
ゲレーロの想い出の選手にはあの日本人が登場ですって、彼一人しかいませんが・・・
ロバート・ゲレーロは、アメリカ合衆国のプロボクサー。カリフォルニア州ギルロイ出身。メキシコ系アメリカ人。元IBF世界フェザー級王者。元IBF世界スーパーフェザー級王者。元WBA・WBO世界ライト級暫定王者。元WBC世界ウェルター級暫定王者。世界4階級制覇王者。サウスポーの技巧派ボクサーで、フットワークも良いため「The Ghost(幽霊)」の異名を持っている。
ゲレーロはボクシング一家で育った。祖父もボクサーで父のルーベンがトレーナーだ。兄も全てボクサーで、ゲレーロ自身は9歳で初めてジムに足を踏み入れた。
アマチュアでは全米選手権バンタム級で銅メダルを獲得した。
シドニーオリンピックの国内予選選考会に出場するが1勝しかできず序盤で敗退。18歳でプロへ転向した。フェザー級とスーパーバンタム級を行ったり来たりしていた。2004年12月9日にはNABF北米フェザー級王座を獲得し2度の防衛後、2005年12月2日に後にWBC世界スーパーフェザー級王者となるガマリエル・ディアス(メキシコ)と対戦するも、1-2の僅差判定負けで王座から陥落。2006年6月23日、ディアスと再戦し、6回KO勝ちで再度同王座を獲得。
2006年9月2日、IBF世界フェザー級王者エリック・エイケン(アメリカ)と対戦し、8回負傷TKO勝ちで初の世界挑戦で王座を獲得。しかし、11月4日の初防衛戦で同級1位オルランド・サリド(メキシコ)に判定で敗れ王座陥落。サリドは試合後のドーピング検査で陽性反応となり、即座に王座を剥奪され試合はノーコンテストに変更された。
2007年2月23日にIBF世界フェザー級王座決定戦で同級4位スペンド・アバジ(デンマーク)を9回TKOで破り、再度王座を獲得。
ゲレーロ
「デンマークまで行ってアバジの地元でストップしました。アメリカ人が外国でタイトルマッチをやる事は少ないとおもう。リスクを冒して私はそれを実現しました。」11月3日には初防衛戦でマーティン・オノリオ(メキシコ)と対戦し、初回TKO勝ちで初防衛に成功。この時期に妻のケーシーが白血病と診断された。彼女は3度再発を繰り返し、最終的には骨髄移植が必要になった。幸運にも、彼女は、夫のゲレーロがタイトルを望んだ以上の勝利を勝ち取り、現在は病状が安定している。
ゲレーロ
「とても辛い時期でした。妻が死ぬかもしれないとおもいながら毎日仕事に行くことを想像してください。私は主イエス・キリストに深い信仰心を持っています。彼女が回復したという事実は私たちが主に近づけたことを意味します。彼女はここ数年間安定しています。神に感謝致します。」ゲレーロは2008年の大半を費やしプロモーションの問題を解決した。同王座を2度防衛後に返上し階級をスーパーフェザー級に上げた。
ゴールデンボーイプロモーションと契約したゲレーロは3試合戦い、2009年8月22日、ヒューストンのトヨタセンターでIBF世界スーパーフェザー級王者マルコム・クラッセン(南アフリカ)と対戦し、12回3-0(117-111、116-112、116-113)の判定勝利で王座を獲得。しかし白血病を患う妻の看病に専念するため、防衛はせずIBF世界スーパーフェザー級王座を返上した。
さらにライト級に階級を上げたゲレーロは、ライト級2試合目でタフなベテランの元王者ホエル・カサマヨールと対戦し判定で勝利、2004年のオリンピアン、ビセンテ・エスコベドを下すとWBA同級2位、WBO同級3位で元WBO世界ライト級暫定王者のマイケル・カティディス(オーストラリア)と対戦し、12回3-0(118-107、118-106、117-108)の判定勝ちで両王座を獲得、3階級制覇を達成した。
ここでゲレーロはさらに大胆な行動に出る。
ファン・マヌエル・マルケスとの対戦が実現しないと、彼はさらに12ポンド増量しウェルター級に挑戦することを宣言、ベルトを返上した。ゲレーロは自分に大きな目標を設定した。フロイド・メイウェザーJrへの挑戦だ。初めてのウェルター級で、シルバー王者セルチュク・アイディン(トルコ)を印象的に打ち負かした。ゲレーロはこの時のパフォーマンスを誇りにおもっている。
ゲレーロ
「2階級上げて無敗のアイディンと戦った。特にあの時は肩の怪我で手術後の長いブランク明けだったので、チューンナップなしでいきなりライト級からウェルター級にあげてそんな奴と戦うなんて、みんなにクレイジーだと言われた。」ゲレーロは打倒メイウェザーをさらにアピールしナチュラルなウェルター級のアンドレ・ベルトと対戦、予想を覆し見事な勝利をあげた。
https://www.youtube.com/watch?v=tVyyYECc_TQ
ゲレーロ
「ベルトを倒した時、私はやっとフロイド・メイウェザーと戦う権利を得た。誰もが、ベルトのパワーをコントロールするには私は小さすぎると言っていた。私はアンダードッグでその試合に挑み、みんなが間違いである事を証明した。」2013年5月4日、MGMグランド・ガーデン・アリーナで行われた王座統一戦で、正規王者でWBA世界スーパーウェルター級スーパー王者フロイド・メイウェザー・ジュニアと対戦。判定まで粘るも、ゲレーロがどんなに努力しても「The MayVinci Code=メイウェザーの暗号」を解くことはできなかった。
その後ゲレーロの快進撃は止まり、2勝4敗となった。キース・サーマン、ダニー・ガルシア、アルゼンチンの無名選手、デビッド・エマニュエル・ペラルタに敗北、最新の試合で、オマール・フィゲロアにキャリア初のTKO負けを喫した時に自分の幽霊をみた。
それが引退の時だと確信した瞬間だった。
(しかし復帰し2連勝、9月28日に試合を予定している。)現在36歳になるゲレーロは2005年からの恋人ケーシーと2人の子供に囲まれて暮らしている。ボクシングの他にクラシックカーの修理や牧場での仕事をしながら家族との時間を楽しんでいる。
ゲレーロ
「私の最終的な目標は、私のキャリアが称えられ、いつか殿堂入りすることです。それは大変名誉なことです。」通算戦績:35勝20KO6敗1分
ライバルについて
ベストジャブ ホエル・カサマヨール
ジョー・グーセンのジムでスパーリングをしている時にホエルは私に硬いジャブの打ち方を教えてくれました。私はアマでもプロでもダウン経験がありませんでしたが、ホエルと戦った最終回のジャブでフラッシュダウンをしました。彼はジャブのマスターです。
ベストディフェンス フロイド・メイウェザー
彼のとらえどころのなさは誰にもないものだ。私がパンチを当てようとするたびに彼は10歩先を進んでいるかのようでした。今まで戦った中で最高のディフェンスマスターだった。
ベストチン 亀海喜寛
この男をあらゆるパンチで殴ったが、戦いは続いた。彼のその他の試合をみてもわかる通り、亀海には信じられないアゴ、タフネスがある。
ハンドスピード マルコム・クラッセン
より軽いクラスにより速い男がいます。スーパーフェザー級時代のクラッセンのハンドスピードはすさまじかった。彼はその後別のタイトルを獲得した。(IBOジュニアライト級)フロイドのパンチは狙い撃ちだった。
フットワーク メイウェザー
彼の横への動きは今まで経験したことのないものだった。彼と戦うまではフットワークがそんなにすごいとはおもわなかった。脚がいいからパンチが当たらないんだ。
スマート メイウェザー
私との試合の序盤をみれば、インファイトでは私が押していたのがわかるとおもいます。フロイドは元はスーパーフェザー級の選手なのであまりパワーがないだろうからインファイトで打ち合おうとおもっていたのです。しかしそれでまずいとおもうと彼はただちに調整して戦い方を変えました。実に頭脳的なファイターです。
屈強 キース・サーマン
フィジカルパワーの違いをすぐに痛感した。彼は実際のところ、147ポンドで戦う154ポンドファイター(スーパーウェルター級)です。どんなに力強いか想像できるでしょう。ナチュラルパワー、生まれ持ったものが違った。
ベストパンチャー サーマン
パワーの乗せ方、生かし方をよくわかっていました。横に動いている時でさえ、奇妙なアングルからパワーショットを打ち込んできました。左右共にパワフルでした。
ベストスキル メイウェザー
彼は全てを兼ね備えており、試合の度にアジャストしていきました。彼は決してハードパンチャーではないが、スキルは間違いなく史上最高です。
総合 メイウェザー
彼はトータルパッケージです。スピード、リングIQ、速い手足、彼に勝つのは困難です。それが彼が無敗で引退した理由です。誰一人彼を解き明かすことができませんでした。
殿堂クラスのファイター2人に認められた日本人、亀海喜寛、この際だからミゲル・コットの言葉も再登場させよう。
コット
「亀海だな。マヨルガも強く打っても立ち向かってきたけど亀海がベストだ。俺は持てるベストパンチを全て打った。それでも彼はガンガン向かってきた。」
両者ともにベストチン!
日本における亀海の魅力は、強打者にしてマスタークラスなショルダーブロック、L時の使い手で、ニックネームはマエストロ(教授)だったが、世界のトップシーンで際立っていたのが打たれ強さだったとは・・・恐らくダメージを逃がす術に長けていたのだろうが、彼らのベストに残るほどだから本物だ。
キャリア初期にガマリエル・ディアスに苦杯をなめてからは4階級上のウェルター級でフロイド・メイウェザーに負けるまで一度も敗北せずに勝ち抜いてきたゲレーロ、そんなに速くも上手くも強打者にもみえなかった地味なサウスポーだが、不思議な強さを持っていた。個人的にはホルヘ・リナレスがやりそうな事をゲレーロが全部やった。
メイウェザーに負けて、亀海との壮絶な打撃戦を制して復帰したゲレーロだったが、この試合で遂に歴戦のダメージが出たか、階級アップのツケがきたのか、次第に勝てなくなっていった。
やはり骨格、本来の適性はライト級くらいなのではないだろうか。
未だ36歳と若く、今月下旬には復帰後3戦目を予定しているが、もうウェルター級ではゴーストの奇跡は起こせないだろう。常に想像を超える事を成し遂げてきただけに侮れないけれど・・・
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