S.O.G.(神の子)と呼ばれるアンドレ・ウォードは単純にボクシングが巧みで、決して負けないからそう呼ばれているくらいしか考えていなかったが、リングの哲学者ともいうべき、とても奥が深く難解な人間なのであった。頭が良くないとボクシングは出来ない、苦悩し克服していく力が必要だ。
暗号
アンドレ・ウォード、恐らく世界最高のプロボクサーは過去の主演男優たちから主役のマントを相続した。しかし、彼の役割は決してモハメド・アリのような生意気なヒーローでも、マイク・タイソンのような恐怖の悪役でも、フロイド・メイウェザーjrのような「金」にとりつかれたアンチヒーローでもない。
偉大な成果を残したにも関わらず、アンドレ・ウォードは未知の存在だ。
他の男たちが脚光を求めたのに対し、彼はそれに抵抗し、プライバシーと家族の物語を厳重に守った。8月6日に予定されているコロンビアのアレクサンダー・ブランドに勝てば、11月19日にウォードはラスベガスでロシアのライトヘビー級王者、セルゲイ・コバレフと戦うことになる。多くのファンがこの10年で最も注目すべき試合になると予感している。
現時点で29勝15KO無敗のウォードほど、ボクシングのクロスワードパズルを巧みに解く男はいない。彼はスーパーミドル級の絶対的長期王者として君臨してきた全階級屈指のファイターだが、ライトヘビー級に転向し、恐怖のパンチャー、コバレフとの対戦を求めた。
セルゲイ・コバレフは現時点で30勝26KOで、2011年にはひどく殴った対戦相手を死に至らしめている。
全てのボクサーはロープに上り、明るく照らされたキャンバスに足を踏み入れる時、ルビコン川を渡る。ボクシングにおいては、短時間やワンパンチでノックアウトされれば、大きな怪我や死には至らないケースがほとんどだが、あまりに長くリングに滞在すると不吉な目的地につながる可能性がある。
認知症、言語障害、網膜剥離、慢性外傷性脳症、パーキンソン病・・・
ジョー・ルイスは麻薬でボロボロになり、アリは沈黙したまま自身の体を投獄し、タイソンは財政的に破綻した。
ごくわずかな者だけが、能力とお金と伝説を無傷で安全に保つ究極の魔法を使った。
2004年のオリンピックで金メダルを獲得した最後のアメリカ人の伝記がほんの少しでも解き明かされると期待するだろう。しかし、風変わりなインタビューを超越して、それは少し様相が異なる。
ウォード
「これまで自分について話をした事がありません。その必要を感じない。スラム街から這い上がった典型的なアフリカ系アメリカ人の物語と一緒にされたくはなかった。」最初に取材した時、ウォードの長年の広報担当者がジムの住所を教えてくれた。
広報担当者
「どこにも看板はありませんが、間違えたとおもわないでください。」カリフォルニア州ヘイワード、サンマテオ橋の隣にあるウォードのトレーニング施設、バージル・ハンターズジム。そこは相手がウォードのディフェンスを突破する時に抱える困難のように、わかりづらくとらえどころのない場所にある。ついに、倉庫の後ろに駐車したバンの横にウォードの壁画をみつけた。反対側にはウォードの白いカスタムトラックがあり、ナンバープレートには「SOG=神の子」と書かれていた。
ウォードが着ている衣類は全てマイケル・ジョーダンのブランドで、オリンピック金メダルを獲得してプロに転向して以来ジョーダンがスポンサーになっている。実際、ウォードは典型的なボクサーのファッションモデルよりもボクサーらしくみえない。
ウォードの笑顔と温かい握手には魅力があるが、同時に彼はとても冷静で何も感情を読み取れない。
ウォード
「あなたの議題(テーマ)がよくわからない。私は30分も心を打ちとけて話などしない。一部のライターは私の2、3の話の引用から自分が好きな物語を創造する。」私はあなたが世界で最高のボクサーだとおもうと答えた。しかし私は彼に賛成も反対もしない。ウォードは一種の暗号だ。どうして彼はそんなに優秀なのだろうか?
ウォードは笑顔をみせてうなずき始めた。
「私はそれ(ボクシング)が出来るのです。」
ウォードがワークアウトを終えると、一緒にオークランド周辺の彼が育った家に向かった。しかし彼はキーをイグニッションに入れた後、一時停止した。
ウォード
「私は両親の事や彼らの苦労について話したことがありません。いつも彼らの名前や彼らが誰であるのか守りたかった。私の物語を、無一文から成り上がった男、スラムから這い上がった子供みたいなありふれた決まり文句に還元したくなかった。私はほとんどにおいて中流家庭で育ちました。自分が堅物と言われていることは知っています。どうやって私がサバイブしてきたとおもいますか?自分を守ることは大事です。けれど、私がどうやって生き抜き、何を克服してきたのかについて、人々に知って欲しいとおもいます。それが誰かを奮起させ、少しでも役に立つのであれば。」
Vol2に続く・・・
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